わたしたちがいま、何の気なしに、こうして、おいしく息を吸って、快適な温度で、おいしく食べ物をいただけるというのは、どうにも、奇跡のような状況では?と、常々思ってきました。
 冷静に考えたら、ありえない話だとは思いませんか?
 人それぞれの、たとえば悩みとか、経済的な点といった個別のものはともかくとして、基本的に、なんでこんなに快適なのだろうか?というところです。
 そのあたりは、たとえば毛利さんなら、宇宙から地球を見たときに、その奇跡を感じるといいます。
 また、阪神大震災から3カ月ほど経ったときの被災者の方へのインタビューの答えが、私は忘れられないのです。
「水道をひねると水が出て、あるいは、電車がまともに走っているというのが、どんなに素晴らしいことか」

 このような奇跡を感じるというのが、宇宙へ飛び出したり、あるいは震災のような困難な状態を経験した人、あるいは厳しい修行を遂行したような人でないと、実感することはできないというのは、あまりにもったいないないような気がします。ごく普通の人々でも、それを実感したり共有できたりする方法はないものか。
 何かそういう言葉か、方法を探してきました。
 そのひとつが実現したのが、この「日常美展示館」という試みであります。
 日常。そこには、ある種、極限の美しさがあるのではないか?
 どうもごくごく当たり前のところに、宝物が散りばめられているのではないか?
 宇宙にまで行かなくても、あるいは厳しい状態を体験しなくても、なにかこの奇跡感を、少しずつではありますが、みんなで実感、共有できるような気がします。
 2005年1月1日。この日をはじまりに、日常美の世界、間の美しさの世界を、どうぞご堪能ください。

日常美展示館 館長 西野久好